ホームシアター業界は去年の秋頃からドルビーアトモスで盛り上がっています。
私自身も、去年9月にアメリカのCEDIA EXPOへ視察に行った際に多くのメーカーがドルビーアトモスのデモンストレーションを行なっていました。
その中でも1番興味があったのはドルビーアトモスを提唱したドルビー自身のデモブース。
ブースの外側。旬な題材だったので多くの人が並ぶ状況でした。
ブース内側。デモを終えたスクリーンには大きく「DOLBY ATMOS」のロゴ。
ドルビーのブースで体験したドルビーアトモス、最初に雨が降るジャングルの中を飛行機が飛ぶ様なシーンがあったのですが、確かにその時は今まで経験した事の無い真上から雨が降り注ぐ様な音に鳥肌が立ちました。
さて、ここで質問です。
ドルビーアトモスは導入すべきか?
その答えは、、、
「部屋によって導入すべきか、そうでないかが大きく分かれる」
と、私は考えています。
まず、ドルビーアトモスの導入に向いている部屋の条件は以下の様になります。
・専用シアタールーム
・5ch又は7ch分のスピーカーを床置又は壁面に埋め込む事が出来る
・トップフロント又はトップリア、もしくはその両方を天井へ埋め込む事が出来る
この条件がそろう事で、ドルビーアトモスの真骨頂であるトップスピーカーにより、頭上の音を表現しやすくなり、オブジェクトベースのミキシングによって、より意図的で精密に音の位置や動きを表現出来る様になるのです。
そして、先ほどの条件から逆算すると、ドルビーアトモスの導入に向いていない部屋の条件は以下の様になります。
・リビングダイニングルームの様に、部屋を明確に区切る壁があまり多くない空間
・吹き抜け天井がある部屋
・5ch又は7chのスピーカーを床置又は壁面に埋め込む事が出来ない(全て天井埋込スピーカー等)
ドルビーアトモスはフロント、センター、サラウンドスピーカー、サラウンドバックスピーカー等の5chないし7ch分のスピーカーを床置又は耳の高さ付近に抑える事で、トップフロント又はトップリア、若しくはその両方のスピーカーとの高低差を利用して高さ方向の音を作り出すので、その環境を作る事が出来なければ効果を体感する事は難しいと私は考えます。
これらをざっくりと纏めて言ってしまえば、
「ドルビーアトモスは専用シアタールーム向きで、リビングシアターには不向き」
と言う事です。
弊社でリビングシアターをインストールする場合、多くのお施主様は5chないし7ch分のスピーカーを天井埋込にする事を選択されます。
なぜならば、リビングと言う生活空間を出来るだけ有効活用したいのは当然の事ながら、置型スピーカーの場合だと掃除が大変になるし、お子様が小さい時にスピーカーにうっかりもたれかかって倒れてケガをしたら危ないからです。
もちろん、お子様がある程度大きいご家庭やご夫婦共に納得の上でフロントスピーカーを床置設置する事もあります。
しかし、その場合でもサラウンドスピーカーの設置方法は圧倒的に天井埋込が大半を占めます。
たまたまリビングとダイニングが別の部屋になっていたり、リビングに5ch分のスピーカーを床置ないし壁面に取付出来る環境であればドルビーアトモスの導入も視野に入れられますが、普通の環境ではなかなか難しいかと思います。
ドルビーアトモスと言う新しいフォーマットが誕生した事については喜んで良い事でしょう。
今までとは大きく異なるオブジェクトベースでの音像定位の向上、既存のBDプレーヤーのままでアンプ側をドルビーアトモス対応にする事での実現、ドルビーアトモス対応ソフトの拡
(これは時間がかかると思いますが)等々、ロスレス以来の大きな進歩を感じます。
何よりもソフト側にドルビーアトモスが搭載され始めている事がキーポイントと言えるでしょう。弊社は7.1chからアトモスの間に出たいくつかのフォーマット(フロントハイ、フロントワイド等)をお客様にお勧めして来なかった大きな理由がそこにあるからです。
しかし、残念な部分としては、この新しいフォーマットへのアップデート(具体的にはアトモス対応サラウンドアンプへの買い替え)を行なっても、必ずしも全員の環境に適合する訳では無い事でしょうか。
苦肉の策としてドルビーはイネーブルドスピーカーと言う天井に向けて音を反射させるスピーカーの規格を用意しています。
この「壁に反射させる」類いのスピーカー、私は殆ど信用していないのです(笑)
ここ10年近く前から、テレビの下にスピーカーを1台置くだけでサラウンドが体感出来る「サウンドバー」的な商品が徐々にふえているのですが(具体的なメーカー名は避けます)、カタログにはリアの音を壁に反射させてサラウンドの音が体感出来る様な書き方をしているのですが、いくら調整しても全く以てサラウンドの音が体感出来なかった事があります。
運良く「それなり」に聴こえる場所を見つけても、頭を少し動かすだけで途端にサラウンド感が失われるのです。
もちろん、昔に比べて現在のスピーカーはかなり良くなっているとは思うのですが、どうしてもうまく行かない印象があるのです。
因みにこの仕事を19年目もしていれば、色々なフォーマットの変遷を体験しました。
ざっと思いつくだけでも以下の様な感じですし、、、
映像系
4:3→16:9→16:10?
アナログ525→デジタル480P→1080P(2K)→2160P(4K)
LD→DVD→BD→4K対応BD
音声系
DOLBY PL→DOLBY DIGITAL→DOLBY PLⅡZ→DOLBY TrueHD→DOLBY ATMOS
DTS→DTS-ES→DTS 96/24→DTS Neo:6/X→DTS-HD→DTS:X
この中で印象に残っているのは映像系だと2K、音声系だとDTSですかね。ジュラシックパークのDTS音声は迫力ありすぎて結構ビビりました。それにU571の潜水艦の中を移動する感じや魚雷の爆発音等々、いやー懐かしい(笑)
「音を良くする」方法は、なにも新しいフォーマットに対応するサラウンドアンプへ買い替えるだけではありません。
また、現在お持ちのサラウンドアンプと同じ価格帯の新しいフォーマットに対応した物に買い替えるだけでは音が良くならない可能性も考えられます。
既存のシステムにおいてどの様な部分が不満で、どの様な部分において改善出来るかも含めてインストーラーがシステムアップに対応しますので、お気軽にご相談ください。
そして、今あるシアターシステムやオーディオシステムを通じてもっと映画の楽しさやアーティストの想いに近づいて頂ければ幸いです。